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【役員報酬はいくらにする?】パターン別の決め方と手取りシミュレーション|ほかに収入がある・年金をもらっている・家族役員(2026年版)
公開 2026.10.14

会社を作ると、社長は自分の給与(役員報酬)を自分で決めることになります。高くすれば会社の利益は減りますが、個人の所得税・住民税と社会保険料が増えます。低くすれば、その分は会社の利益として法人税がかかります。
どちらが得かは、会社の利益、社長の年齢、個人でほかに収入があるか、年金をもらっているか、家族も役員か、などで変わります。この記事では、決め方の考え方をパターン別に整理し、金額を入れて比べられるシミュレーションを用意しました。
まず押さえる役員報酬のルール
役員報酬は、決め方・払い方のルールを守らないと会社の経費(損金)になりません。金額を考える前に、次の4点を確認しておきましょう。
- 毎月同じ金額で払う(定期同額給与)。手取りが毎月同じでもよい
- 金額を決めたり変えたりできるのは、事業年度が始まってから3か月以内。設立1期目は設立日から3か月以内
- 期の途中で増やしたり減らしたりすると、原則として差額の部分が経費にならない(役職の変更や業績の著しい悪化などの例外を除く)
- 役員に賞与を払うなら、事前確定届出給与の届出を期限までに出し、届けたとおりに払う
くわしくは会社を設立したらやることの「役員報酬の決め方と注意点」と、役員賞与を経費にするには?をご覧ください。つまり、1年分の金額を期首から3か月以内に決めて、1年間は変えないのが前提です。
考え方:「全体の負担」がいちばん少ない金額を探す
会社のお金を社長に渡すときにかかる負担は、大きく3つです。役員報酬の金額を変えると、それぞれが増えたり減ったりします。
| 負担 | 報酬を増やすと | おおよその率(2026年10月時点) |
|---|---|---|
| 会社の税金(法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税など) | 減る(会社の利益が減るため) | 中小法人・東京23区の場合、所得のうち年400万円以下の部分は約22%、400万円超800万円以下の部分は約25%、800万円超の部分は約37% |
| 社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金・子ども・子育て支援金) | 増える(会社と本人で半分ずつ) | 会社と本人の合計で約30%(40〜64歳の場合。健康保険9.85%+介護1.62%+支援金0.23%+厚生年金18.3%、東京の協会けんぽ) |
| 個人の所得税・住民税 | 増える | 所得税5〜45%(+復興特別所得税)+住民税10%。給与には給与所得控除がある |
会社の税金の率は、法人税・地方法人税・法人住民税(法人税割)・法人事業税・特別法人事業税を単純に足したものです(事業税が翌期の経費になる効果は除く)。法人税額が年500万円を超える会社には、令和8年4月1日以後に始まる事業年度から防衛特別法人税もかかります。
社会保険料は会社負担と本人負担を合わせると約30%と大きいため、税金だけでなく社会保険料も含めた合計で比べることが大切です。ただし、社会保険料は払いっぱなしではなく、厚生年金は将来の年金や障害年金、健康保険は病気やけがで休んだときの傷病手当金として戻ってきます。
また、社会保険料の計算のもとになる標準報酬月額には上限があります。厚生年金は月65万円が上限で(2027年9月から68万円、2029年9月までに75万円へ段階的に引き上げ)、それを超える報酬には厚生年金保険料がかかりません。健康保険の上限は月139万円です。
役員報酬シミュレーション
会社の利益と社長の報酬を入れると、会社の税金・社会保険料・個人の税金の合計と、全体の負担がいちばん少なくなる報酬の目安をグラフで表示します。ほかの収入や家族役員の報酬も入れられます。
役員報酬シミュレーション
会社の利益と役員報酬から、会社の税金・社会保険料・個人の所得税と住民税を概算し、全体の負担がいちばん少なくなる報酬の目安を出します。2026年10月時点の法令・料率(令和8年分の所得税、東京都・協会けんぽ)にもとづきます。
会社と社長
社長個人のほかの収入(ある場合)
家族も役員にして報酬を払う(ある場合)
※ 概算です。法人は資本金1,000万円以下・従業者50人以下・東京23区のみに事務所がある中小法人、事業年度は1年、役員報酬は毎月同額(賞与なし)、扶養親族なし、所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみで計算しています。法人の赤字の繰越し、事業税が翌期の経費になること、社長の国民健康保険・国民年金(ほかの収入にかかるもの)、他社で社会保険に入っている場合の合算(二以上事業所勤務)、75歳以上の後期高齢者医療の保険料は含みません。社会保険料は将来の年金や傷病手当金などの給付にもつながります。会社に残したお金も、あとで配当や退職金として受け取るときに税金がかかります。実際の金額は、税理士にご相談ください。
シミュレーションで「負担が最小」になる金額は、あくまで税金と社会保険料だけで見た目安です。実際には、社長の生活に必要なお金、将来の年金、会社に残したお金の使いみち(設備投資・借入の返済・退職金の準備など)もあわせて決めます。
パターン別の考え方
① 社長1人で、ほかに収入がない
- 会社の利益をすべて報酬で出すと、個人の税率と社会保険料が高くなりすぎることが多い。逆に報酬を低くしすぎると、会社に利益が残り、法人税がかかる
- 社会保険料も負担に含めると、報酬を低めにしたほうが全体の負担は少なくなりやすい。一方、厚生年金保険料を「将来戻ってくるもの」と考えて除くと、最適な金額は高めになる。シミュレーションのチェックを切り替えて比べてみましょう
- 会社の所得が年800万円を超えると、その部分の法人税率が上がる(15%→23.2%)。会社の所得が800万円以下に収まるように報酬を決めるのが一つの目安
- 会社に残したお金は、あとで配当(個人で総合課税)や退職金(退職所得控除があり、2分の1課税)として受け取るときにも税金がかかる。退職金まで見すえて、会社に残す額を決めるのも方法です
② 個人でほかに収入がある
個人の所得税・住民税は、役員報酬とほかの所得を合計した金額に税率がかかります。ほかの収入があると、役員報酬にかかる税率も高くなるため、報酬を抑えて会社に利益を残すほうが有利になりやすくなります。
- 不動産所得・事業所得がある:役員報酬の給与所得と合算して確定申告をします。所得が多いほど、役員報酬を増やしたときの税率が高くなります。個人事業と法人を組み合わせる場合は、マイクロ法人とは?もご覧ください
- ほかの会社からも給与をもらっている:給与所得控除は、すべての給与を合計した金額に対して1回だけ計算します。年末調整は「主たる給与」の1社だけで行い、もう一方は源泉徴収の乙欄となり、原則として確定申告が必要です
- ほかの会社でも社会保険に入っている:両方の会社で社会保険の加入要件を満たすときは、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を出し(10日以内)、両社の報酬を合計した標準報酬月額で保険料が決まり、それぞれの報酬額で按分します。ほかの会社の給与で厚生年金の上限に近い場合、自分の会社の報酬を増やしても、厚生年金保険料はあまり増えません
シミュレーションでは、ほかの会社で社会保険に入っている場合の合算や、個人事業の国民健康保険料は計算に含めていません。実際の保険料は年金事務所や市区町村の計算で確認してください。
③ 年金をもらっている社長
65歳以上で老齢厚生年金をもらいながら役員報酬を受け取ると、在職老齢年金のしくみで、年金の一部または全部が止まることがあります。
- 2026年4月から、年金が止まり始める基準額(支給停止調整額)が月65万円に引き上げられた(2026年3月までは51万円)
- 「老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額」+「標準報酬月額(直近1年の賞与を12で割った額を含む)」が65万円を超えると、超えた分の半分が止まる
- 老齢基礎年金は止まらない。70歳以上は厚生年金に入らないが、在職老齢年金のしくみは同じように適用される。75歳以上は健康保険ではなく後期高齢者医療制度に入る
- 年金をもらいながら給与もあるときは、公的年金等控除と給与所得控除の両方が使える(両方あるときは所得金額調整控除で10万円まで調整)。年金と報酬を合わせた所得で税率が決まる
年金が止まる分も「負担」と考えると、報酬を基準額の範囲に収めるほうが有利になることがあります。シミュレーションで「うち老齢厚生年金(報酬比例部分)」を入れると、止まる年金額も計算します。
④ 家族を役員にする
配偶者や子どもを役員にして報酬を払うと、1人あたりの所得が低くなり、それぞれが給与所得控除・基礎控除と低い税率を使えるため、家族全体の税金が少なくなることがあります。
- 実際に仕事をしていることが前提:役員会への出席、経理や営業など、職務の実態が必要です。名前だけの役員への報酬は、経費として認められないおそれがあります
- 金額は仕事に見合う額に:職務の内容、会社の利益、従業員の給与、同じ規模・業種の会社の役員報酬などと比べて不相当に高い部分は経費になりません(法人税法34条2項)
- 社会保険:常勤の役員は社会保険に加入します。非常勤の役員は、勤務の実態によっては加入しないこともあります
- 扶養から外れることがある:報酬が増えると、社長の配偶者控除・扶養控除(合計所得62万円以下などの要件)や、健康保険の被扶養者(年収130万円未満など)から外れることがあります
⑤ 設立1期目で利益が読めない
- 設立1期目も、設立日から3か月以内に金額を決める必要があります。売上の見通しが立たないうちは、生活に必要な額をもとに低めに決めるのが一般的です
- 期の途中で利益が予想より多くなっても、報酬を増やすことはできません(増やした分は経費にならない)。その期は会社に利益を残し、翌期の期首から3か月以内に見直します
- 利益の見通しがある程度立つなら、事前確定届出給与(設立の日以後2か月を経過する日までに届出)で賞与を組み合わせる方法もあります。賞与にも社会保険料がかかります(健康保険は年度の累計573万円、厚生年金は1か月150万円が上限)
- 資金繰りが厳しくなっても、一時的な理由では減額できません。最初から無理のない金額にしておきましょう
パターン別の目安
| 状況 | 報酬の考え方 | あわせて確認すること |
|---|---|---|
| 社長1人・ほかに収入なし | 会社の所得が800万円以下に収まる範囲で、生活費と社会保険料のバランスを見て決める | 退職金・小規模企業共済など、会社に残すお金の使いみち |
| 不動産・事業の所得がある | ほかの所得が多いほど、報酬は抑えめに | 個人事業の国民健康保険料、マイクロ法人の扱い |
| ほかの会社の給与がある | 税率は合算で上がる。社会保険は両社の合算で決まる | 二以上事業所勤務届、確定申告(乙欄) |
| 年金をもらっている | 在職老齢年金の基準額(月65万円)を意識する | 報酬比例部分の年金額、年齢(70歳・75歳) |
| 家族を役員にする | 仕事の実態に見合う金額で分ける | 扶養から外れるか、社会保険に入るか |
| 設立1期目 | 3か月以内に、無理のない金額で決める | 期中は増額できない。翌期に見直す |
よくある質問
Q. 役員報酬を0円にしてもいいですか?
できます。無報酬の役員は会社の社会保険に入らないため、社長個人で国民健康保険と国民年金に入ります。その場合、会社の利益にはすべて法人税がかかり、会社のお金を個人で使うには配当などの形が必要です。設立直後の0円からの増額は、事業年度開始から3か月以内に決める必要がある点に注意してください。
Q. 期の途中で利益が出すぎました。報酬を増やせますか?
原則として増額はできません。増やすと差額が経費にならず、個人には所得税がかかるため、かえって負担が増えます。その期は、小規模企業共済や経営セーフティ共済などの対策を検討し、翌期の報酬を見直しましょう。
Q. 社会保険料を抑えるために、月額を低くして賞与を多くするのはどうですか?
賞与にも社会保険料がかかり、事前確定届出給与の届出どおりに払う必要があります。届出と違う金額や時期で払うと、その賞与は経費になりません。賞与の上限(健康保険は年度の累計573万円、厚生年金は1か月150万円)を超える部分には保険料がかかりませんが、組み合わせは慎重に検討しましょう。
Q. 報酬を決めたら、何を残しておけばいいですか?
株主総会(または定款の定めにより取締役会)で金額を決議し、議事録を作って保管します。期首から3か月以内に決めたことがわかる日付で作りましょう。
まとめ
- 役員報酬は、期首(設立日)から3か月以内に決め、1年間は毎月同じ金額で払う
- 金額は、会社の税金・社会保険料・個人の税金を合わせた全体の負担で比べる
- 個人でほかに収入があると税率が上がるため、報酬は抑えめが有利になりやすい
- 年金をもらっている社長は、在職老齢年金の基準額(月65万円)に注意
- 家族役員は、仕事の実態と金額のバランスが大切
新宿パートナーズ税理士事務所では、会社の利益の見通しと、社長個人の収入・年金・家族の状況をふまえた役員報酬のシミュレーション、議事録の作成、事前確定届出給与の届出まで対応しています。期首から3か月以内に決める必要があるため、お早めにご相談ください。
ご注意
本記事は2026年10月14日時点の法令・情報にもとづいて作成しています。税制は改正されることが多いため、お読みいただく時期によっては内容が変わっている場合があります。また、記事は一般的な情報をわかりやすくお伝えするためのもので、実際の取り扱いはお一人おひとりのご事情によって異なることがあります。内容には十分に注意しておりますが、本記事をもとにしたご判断の結果については責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。個別のご相談は、どうぞお気軽に当事務所へお問い合わせください。
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