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【マイクロ法人とは?】個人事業との二刀流で社会保険料を抑えるしくみ|メリット・費用・2026年の通知と注意点
公開 2026.10.13

「マイクロ法人をつくると社会保険料が安くなる」という話を、SNSや本で見かけることが増えました。一方で、「本当に得なの?」「違法にならない?」という相談もよくいただきます。
この記事では、マイクロ法人のしくみと、どんな人に向いていて、どんな人には向かないか、実行するときの費用と注意点を、協会けんぽ・厚生労働省などの公表資料をもとに整理します。
マイクロ法人とは
マイクロ法人は法律上の言葉ではなく、社長1人(または家族だけ)で運営する小さな会社を指す呼び方です。よく話題になるのは、個人事業を続けながら、別の事業を行う会社をつくり、個人事業と法人の「二刀流」にする形です。
- 個人事業:これまでどおり事業を行い、所得税・住民税・個人事業税を払う
- 法人:別の事業を行い、社長は会社から少額の役員報酬を受け取る
- 社会保険:社長は会社の健康保険・厚生年金に加入し、国民健康保険・国民年金からは外れる
なぜ社会保険料が安くなるのか
個人事業だけの場合、国民健康保険料は個人事業の所得が増えるほど高くなり、上限は年100万円を超えます(市区町村によって異なります)。
一方、会社の健康保険・厚生年金の保険料は、会社から受け取る役員報酬の額(標準報酬月額)をもとに決まります。個人事業の所得は保険料の計算に入りません。そのため、役員報酬を低く設定すると、個人事業の所得がいくら多くても、社会保険料は低いまま、というしくみです。
| 役員報酬(月額) | 健康保険料(会社+本人) | 厚生年金保険料(会社+本人) |
|---|---|---|
| 6万3,000円未満(最も低い等級) | 約5,700円(標準報酬月額5万8,000円) | 約1万6,100円(標準報酬月額8万8,000円) |
上の表は、協会けんぽ東京支部の令和8年度の料率(健康保険9.85%、厚生年金18.3%)で計算した目安で、40歳未満・介護保険料なしの場合です。厚生年金は最も低い等級が8万8,000円のため、役員報酬が少なくても健康保険より高くなります。このほかに子ども・子育て支援金(月100円台)がかかり、40〜64歳は介護保険料も加わります。会社負担分と本人負担分の合計で月2万2,000円前後が目安です。
会社負担分も本人負担分も、結局は社長自身のお金から出ていきます。「会社負担があるから半分で済む」わけではない点に注意しましょう。
マイクロ法人のメリット
- 社会保険料を抑えられる:個人事業の所得が多いほど、国民健康保険料との差が大きくなります
- 厚生年金に入れる:国民年金だけの場合より、将来の年金が少し増えます
- 家族を扶養に入れられる:収入などの要件を満たす家族は、健康保険の被扶養者になれます(国民健康保険には扶養の考え方がありません)
- 所得を分けられる:個人と法人に所得が分かれることで、税率の高い部分を減らせる場合があります
かかる費用とデメリット
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 会社の設立費用 | 株式会社で約20万円〜、合同会社で約6万円〜(登録免許税・定款認証など) |
| 法人住民税の均等割 | 赤字でも年7万円程度(東京23区の最低額) |
| 税理士費用 | 決算申告・社会保険の手続きを頼む場合は年数十万円 |
| 社会保険料 | 会社負担と本人負担の合計で月2万円台〜 |
| 手間 | 会社の帳簿・決算・社会保険の手続き、役員報酬の支払いなど |
国民健康保険料・国民年金保険料がどれだけ減るかと、上の費用を比べて、差額がプラスになるときだけ意味があります。個人事業の所得が少ないうちは、費用のほうが大きくなることが多いです。
マイクロ法人が向いている人・向いていない人
- 向いている:個人事業の所得が多く(目安として年数百万円以上)、国民健康保険料が高い人
- 向いている:個人事業とは別に、法人で行える事業(コンサルティング、不動産賃貸、物販など)がある人
- 向いていない:個人事業の所得がまだ少ない人。設立費用や均等割、税理士費用のほうが大きくなりやすい
- 向いていない:個人と法人で同じ仕事をしていて、事業を分けられない人
実行前に必ず確認したい注意点
1. 個人事業と法人で、事業をはっきり分ける
同じ取引先に同じ仕事をしているのに、請求書を個人と法人で振り分けているだけ、という形は、事業の実態がないと判断されるおそれがあります。事業の内容・取引先・契約・口座・帳簿を、個人と法人で分けておくことが前提です。
2. 2026年の厚生労働省の通知(3月・9月)
2026年3月18日、厚生労働省は、法人の役員になった個人事業主の健康保険・厚生年金の資格について通知を出しました。社会保険料の削減をうたって個人事業主を他人の法人の役員にし、役員報酬を上回る「会費」を支払わせるしくみを問題視したもので、このような場合は原則として被保険者の資格が認められません。
9月14日にはこの通知が改正され、次の点がよりはっきりしました。
- 「会費」の名前は問わない:勉強会費・広告費・コンサルタント料・協力金・委託費なども同じ扱い
- 関連する別の法人に払わせても同じ:法人間でお金を動かしているだけなら、同じ法人として判断
- 形だけの役員業務は認めない:勉強会への参加やアンケートへの回答、単なる活動報告などは、経営への参画とは認められない
役員の資格は、①業務が実態として会社の経営に参加する継続的な仕事か、②報酬が業務の対価として継続的に支払われているか、の2つで判断されます。自分で会社をつくって実際に事業を行う場合も、この基準はそのまま当てはまります。法人の事業の実態と役員報酬の妥当性(業務の量や内容に見合っているか)を説明できるよう、契約書・請求書・議事録などの記録を残しておきましょう。
3. 役員報酬のルール
役員報酬を法人の経費にするには、原則として毎月同じ額(定期同額給与)にする必要があります。期の途中で自由に増減すると、経費にならない部分が出ます。役員報酬の決め方は、役員賞与・役員報酬の記事もあわせてご覧ください。
4. 将来の年金と保障
役員報酬が低いと、厚生年金の受取額も小さくなります。また、病気やけがで休んだときの傷病手当金も、標準報酬月額をもとに計算されるため少なくなります。社会保険料が安いことは、保障が小さいことの裏返しでもあります。
5. 制度は変わる可能性がある
社会保険の加入要件や保険料の計算方法は、改正が続いています。マイクロ法人のしくみ自体が見直される可能性もあるため、つくったあとも制度の変化を確認し続ける必要があります。
マイクロ法人をつくるまでの流れ
- 1. 試算する:今の国民健康保険料・国民年金保険料と、法人をつくった場合の社会保険料・費用を比べる
- 2. 法人で行う事業を決める:個人事業と重ならない事業・取引先を用意する
- 3. 会社を設立する:合同会社か株式会社かを決め、登記する(会社設立後にやることの記事)
- 4. 社会保険に加入する:年金事務所に新規適用届などを出し、役員報酬を決める
- 5. 帳簿を分ける:個人と法人で口座・会計ソフト・請求書を分ける
よくある質問
Q. マイクロ法人は違法ではないのですか?
A. 会社をつくって役員報酬を受け取り、会社の社会保険に入ること自体は、法律に沿ったしくみです。ただし、事業の実態がない会社や、会費を払って役員になるだけのしくみは、社会保険の資格が認められないおそれがあります。実態のある事業を行うことが前提です。
Q. 役員報酬はいくらにすればいいですか?
A. 社会保険料だけを見れば低いほど有利ですが、将来の年金や傷病手当金、法人の利益への課税、生活費とのバランスも考える必要があります。年齢・家族構成・個人事業の所得によって最適な額は変わるため、試算してから決めましょう。
Q. 個人事業をやめて法人だけにするのとは何が違いますか?
A. 法人だけにする「法人成り」では、事業の所得はすべて法人に入り、社長は役員報酬で受け取ります。マイクロ法人の二刀流は、個人事業の所得を残したまま、社会保険料の基準を法人の低い役員報酬にする点が違います。
まとめ
マイクロ法人は、個人事業の所得が多い人にとって社会保険料を抑えられる方法ですが、設立費用・均等割・税理士費用などのコスト、将来の年金や保障が小さくなること、事業を実態として分ける必要があることに注意が必要です。2026年3月には厚生労働省の通知も出ており、形だけの法人は認められにくくなっています。
当事務所では、今の所得をもとに、マイクロ法人をつくった場合と個人事業のままの場合の税金・社会保険料の試算や、設立後の記帳・決算のサポートを承っています。初回相談は無料です。お気軽にご相談ください。
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ご注意
本記事は2026年10月13日時点の法令・情報にもとづいて作成しています。税制は改正されることが多いため、お読みいただく時期によっては内容が変わっている場合があります。また、記事は一般的な情報をわかりやすくお伝えするためのもので、実際の取り扱いはお一人おひとりのご事情によって異なることがあります。内容には十分に注意しておりますが、本記事をもとにしたご判断の結果については責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。個別のご相談は、どうぞお気軽に当事務所へお問い合わせください。
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