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【法人化すべき?】個人事業・法人・マイクロ法人はどれが得か|手取りシミュレーションつき(2026年版)
公開 2026.10.13

「利益がいくらになったら法人化したほうがいいの?」「マイクロ法人という方法もあると聞いたけど、どれがいちばん得?」というご相談をよくいただきます。
この記事では、個人事業のまま・法人化(法人成り)・マイクロ法人(個人事業と小さな会社の併用)の3つを、税金だけでなく社会保険料まで含めた手取りで比べます。記事の途中に、事業の利益を入れるだけで3つを並べて比べられるシミュレーションを用意しました。
結論:法人化を考える目安
税金だけで比べると、法人化の目安は「事業の利益が800万円前後」とよく言われます。個人の所得税・住民税は利益が増えるほど税率が上がる(最高55%)のに対し、中小法人の法人税等は利益800万円までは税率が低く抑えられているからです。
ただし、社会保険料まで入れて比べると、目安はもっと上にずれます。法人にすると社長1人の会社でも健康保険・厚生年金への加入が必要になり、役員報酬に対して会社と本人の合計で約3割の保険料がかかるためです。今回の試算(東京都新宿区・単身・40歳未満)では、次のような結果になりました。
- 利益をほぼすべて役員報酬で受け取る場合:個人の手取りが個人事業を上回るのは、利益1,500万円前後から
- 役員報酬を低めにして会社にお金を残す場合:「手取り+会社に残るお金」の合計は、利益600万円前後から法人のほうが多くなる。ただし、会社に残したお金を個人で使うには、あとで役員報酬・配当・退職金として受け取る必要があり、そのときにも税金がかかる
- マイクロ法人:国民健康保険料・国民年金がなくなる分、利益300万円程度から手取りが増える試算になる。ただし、会社に事業の実態があることが前提。2026年3月・9月の厚生労働省の通知で、形だけの役員による社会保険の加入は認められないことがはっきりした
目安は一つの条件での試算です。家族構成、売上の規模(消費税)、将来受け取る年金、退職金の予定、事業の伸び方などで答えは変わります。下のシミュレーションで、ご自身に近い条件を入れてみてください。
個人事業・法人・マイクロ法人のちがい
| 個人事業 | 法人 | マイクロ法人 | |
|---|---|---|---|
| 利益にかかる税金 | 所得税・住民税(利益が増えるほど税率が上がる。最高55%)+個人事業税 | 法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税など(中小法人で利益800万円までは約22〜24%) | 個人事業の分は個人と同じ。会社は利益をほぼ出さない |
| 社長の収入 | 事業の利益がそのまま所得 | 役員報酬(給与所得控除が使える) | 個人事業の所得+少額の役員報酬 |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 健康保険・厚生年金(会社と本人で半分ずつ) | 会社で健康保険・厚生年金に加入(低い報酬で加入) |
| 赤字でもかかる税金 | ほぼなし(住民税の均等割など) | 法人住民税の均等割(東京23区で資本金1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円) | 会社の均等割 年7万円 |
| 設立・維持の費用 | ほぼかからない | 設立費用(電子定款の場合、株式会社で約20万円〜、合同会社で約6万円〜)、税理士報酬など | 会社の設立費用・維持費+個人と会社の2つの申告 |
| 事務の手間 | 少ない | 給与計算、社会保険の手続き、法人の決算・申告 | 個人と法人の両方 |
マイクロ法人のしくみや注意点は、マイクロ法人とは?個人事業との二刀流で社会保険料を抑えるしくみで詳しく解説しています。
マイクロ法人と社会保険の規制(2026年の厚生労働省の通知)
2026年3月18日、厚生労働省は「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」という通知を出しました。社会保険料の削減をうたって、個人事業主やフリーランスを他人が運営する法人の役員にし、健康保険・厚生年金に加入させる一方で、役員報酬を上回る「会費」を支払わせるしくみが広がっていたためです。本来は国民健康保険・国民年金に入るべき人が、低い保険料で健康保険・厚生年金に入っている可能性がある、とされています。
同じ年の9月14日にはこの通知が改正され、次の点がよりはっきりしました。また同じ日に、「勤務時間が短い正社員」として雇う形で加入させるケースについても、別の通知が出ています。
- 「会費」の名前は問わない:勉強会費・広告費・掲載料・コンサルタント料・協力金・委託費など、名称にかかわらず同じ扱い
- 関連する別の法人に払わせても同じ:会費の支払いが役員になる実質的な条件で、法人間でお金を動かしているだけなら、同じ法人として判断する
- 会費が報酬より少なくても安心ではない:会費が報酬の多くを占める場合などは、働き方の実態を見て個別に判断する
- 形だけの役員業務は認めない:勉強会への参加やアンケートへの回答、単なる活動報告や事業紹介への協力、役員どうしの紹介し合いなどは、経営への参画とは認められない
役員が健康保険・厚生年金に加入できるかは、もともと次の2つの基準で、実態をみて判断されます。
- ① 仕事の中身:その業務が、実態として会社の経営に参加する継続的な仕事か(指示・監督する相手がいるか、決裁する業務があるか、会議以外にどのくらい働いているか など)
- ② 報酬の中身:その報酬が、業務の対価として会社から継続的に支払われているか
通知が直接の対象にしているのは、他人の法人に形だけ役員として入るしくみです。ただし、上の2つの基準は自分で作るマイクロ法人にもそのまま当てはまります。会社に事業の実態がない、役員報酬が業務の対価になっていない、と判断されると、健康保険・厚生年金の資格が認められず、国民健康保険・国民年金に戻ることになります。マイクロ法人をつくるなら、少なくとも次の点を確認しておきましょう。
- 会社に独自の事業・取引先・売上がある(個人事業から会社へお金を移すだけになっていない)
- 会社の取引について、契約書・請求書などの記録がある
- 役員報酬が、会社で行う業務の量や内容に見合った額になっている
- 個人事業と会社で、経費・預金口座・帳簿をきちんと分けている
- 役員報酬の決定などを議事録に残している
この記事のシミュレーションは、会社に事業の実態があり、健康保険・厚生年金の加入が認められることを前提にした試算です。
手取りシミュレーション
事業の利益(売上から経費を引いた金額)を入れると、個人事業・法人・マイクロ法人の税金、社会保険料、手取りを並べて表示します。法人の役員報酬は、「利益をほぼ全額報酬で受け取る」と「手取り+会社に残るお金が最大」のボタンで切り替えられます。
手取りシミュレーション(個人事業・法人・マイクロ法人)
2026年10月時点の税率・保険料率で計算した概算です(東京都新宿区・単身・青色申告65万円控除)。
※ 法人の「会社に残るお金」は、法人税等を払ったあとに会社に残る金額です。個人で使うには、あとで役員報酬・配当・退職金などとして受け取る必要があり、そのときにも税金がかかります。
※ 所得税は令和8年分の基礎控除(特例を含む)・給与所得控除で計算し、給与所得控除は算式で計算しています(実際は表で4千円単位)。国民健康保険料は前年も同じ所得だった場合、法人事業税の損金算入(翌年の経費)や消費税、家族への給与、各種の控除は考慮していません。実際の金額は個別の状況で変わります。
- 前提:東京都新宿区にお住まい・単身(扶養する家族なし)・青色申告特別控除65万円
- 所得税は令和8年分(2026年分)の税率・基礎控除で計算。住民税・国民健康保険料は同じ所得が続く前提で計算
- 法人は資本金1,000万円以下の中小法人で、東京23区の標準税率。役員報酬は毎月同額(賞与なし)
- 社会保険は協会けんぽ東京支部の令和8年度の保険料率(子ども・子育て支援金を含む)と厚生年金で計算
- 消費税、法人事業税を翌年の経費にする効果、家族への給与、生命保険料などの控除は含めていません
計算例:利益500万・800万・1,200万・2,000万円の場合
シミュレーションと同じ条件(40歳未満、法人化で増える費用 年20万円、マイクロ法人は役員報酬 月6万円・維持費 年15万円)で計算した結果です。
| 事業の利益 | 個人事業の手取り | 法人(ほぼ全額を役員報酬) | 法人(手取り+会社に残るお金が最大) | マイクロ法人の手取り |
|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 371万円 | 326万円 (月34万円・会社に残るお金はほぼ0) | 93万円+会社に残る 270万円 (月9万円) | 407万円 |
| 800万円 | 541万円 | 525万円 (月57万円・会社に残るお金はほぼ0) | 93万円+会社に残る 497万円 (月9万円) | 605万円 |
| 1,200万円 | 774万円 | 759万円 (月87万円・会社に残るお金はほぼ0) | 271万円+会社に残る 601万円 (月28万円) | 849万円 |
| 2,000万円 | 1,185万円 | 1,207万円 (月152万円・会社に残るお金はほぼ0) | 505万円+会社に残る 883万円 (月54万円) | 1,260万円 |
利益をすべて役員報酬で受け取ると、利益1,200万円でも個人事業とほぼ変わりません。役員報酬にかかる社会保険料(会社負担分を含む)が重く、給与所得控除や法人税率の低さの効果を打ち消してしまうためです。
一方で、役員報酬を低めにして会社にお金を残すと、合計は大きく増えます。ただしこれは「会社のお金」であり、生活費として使えるのは個人の手取りの部分だけです。会社に残したお金は、事業への再投資、将来の退職金(退職所得として税金が軽くなる)、経営セーフティ共済などの節税策と組み合わせて考えるのが現実的です。
法人化で税金が変わるしくみ
個人の税率は最高55%、法人は約22〜37%
個人の所得税は課税所得に応じて5%〜45%の7段階で、住民税10%と合わせると最高55%になります。これに対して、中小法人の法人税等(法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税)は、次のくらいの負担です(均等割を除く概算)。
| 法人の所得 | 法人税等(概算) | 所得に対する割合 |
|---|---|---|
| 400万円 | 90万円 | 22.4% |
| 800万円 | 189万円 | 23.6% |
| 1,500万円 | 447万円 | 29.8% |
| 3,000万円 | 1,004万円 | 33.5% |
800万円を超える部分には法人税23.2%がかかり、地方税と合わせると約37%になります。また、2026年4月1日以後に始まる事業年度からは、法人税額が年500万円を超える部分に4%の防衛特別法人税がかかります(法人税額が500万円以下なら、かかりません)。
役員報酬には給与所得控除が使える
法人化すると、社長は会社から役員報酬を受け取ります。役員報酬は給与所得になるため、収入に応じた給与所得控除(収入850万円超で195万円)を差し引けます。会社では役員報酬が経費になり、個人では給与所得控除が使えるため、同じお金でも税金がかかる部分が小さくなります。
社会保険料が重くなる
法人は社長1人でも健康保険・厚生年金に加入する義務があります。2026年度の協会けんぽ東京支部では、健康保険料率9.85%(40〜64歳は介護保険料1.62%を加算)、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%で、これを会社と本人で半分ずつ負担します。役員報酬が上がるほど保険料も増えるため、報酬を高くすると税金は下がっても社会保険料が増える、という関係になります。
その代わり、厚生年金に加入すると将来の年金が増え、病気やけがで働けないときの傷病手当金などの保障も受けられます。目先の手取りだけでなく、こうした保障の違いも含めて考えることが大切です。
税金以外に考えたいこと
- 設立費用と毎年の維持費:設立の登録免許税や定款の費用、法人住民税の均等割(赤字でも年7万円〜)、税理士報酬など
- 事務の手間:役員報酬の給与計算・源泉徴収、社会保険の手続き、法人の決算・申告が必要になる
- お金の自由度:会社のお金は社長個人のお金ではなくなる。生活費は役員報酬として受け取る
- 信用・取引:取引先によっては法人でないと契約できないことがある。銀行融資や採用で有利になることも
- 退職金・生命保険:役員退職金を会社の経費にでき、受け取る側も退職所得として税金が軽くなる
- 赤字の繰越:法人は青色申告の赤字(欠損金)を10年繰り越せる(個人は3年)
法人化のタイミングと注意点
- 消費税:資本金1,000万円未満で設立すると、1期目は原則として消費税の納税義務がない(2期目は前期の最初の6か月の売上・給与で判定)。ただし、インボイスの登録をすると1期目から課税事業者になる
- 役員報酬の決め方:役員報酬を経費にするには、事業年度の開始から3か月以内に決めて、毎月同じ額で支払う必要がある(定期同額給与)。途中で自由に変えられないため、1年分の利益を見込んで決める。詳しくは役員賞与を経費にするには?
- 年の途中で法人化した年:個人の確定申告(1月〜法人化まで)と、法人の決算が両方必要になる
- 個人事業からの引継ぎ:個人事業の廃業届、在庫・設備・預金などの会社への引継ぎ、取引先との契約の切り替えが必要
- 設立後の届出:税務署・都道府県・区市町村・年金事務所への届出に期限がある。会社を設立したらやることのチェックリストもご覧ください
よくある質問
Q. 売上がいくらになったら法人化すべきですか?
判断の基準は売上ではなく利益(売上−経費)です。税金だけなら利益800万円前後が目安と言われますが、社会保険料まで含めると、利益をすべて役員報酬で受け取る場合はもっと上になります。消費税の課税事業者になる(売上1,000万円超)タイミングも判断材料の一つです。
Q. 法人化すると社会保険には必ず入らないといけませんか?
はい。法人は社長1人でも、役員報酬を支払っていれば健康保険・厚生年金の加入が必要です(役員報酬が0円の場合などを除く)。国民健康保険・国民年金からは切り替わります。
Q. マイクロ法人はやったほうが得ですか?
試算では手取りが増えやすい方法ですが、個人事業と会社の事業をきちんと分けること、会社に実態があることが前提です。2026年3月(9月に改正)の厚生労働省の通知で、役員としての業務や報酬に実態がない場合は健康保険・厚生年金の資格が認められないことが明確になっています(くわしくは上の「マイクロ法人と社会保険の規制」)。実行前にマイクロ法人の注意点をご確認ください。
Q. シミュレーションの結果どおりになりますか?
シミュレーションは条件を簡単にした概算です。お住まいの地域(国民健康保険料は市区町村で違います)、家族構成、各種の控除、消費税、事業の見通しで結果は変わります。実際に判断するときは、税理士にご相談ください。
まとめ
- 法人化の判断は、税金だけでなく社会保険料まで含めた手取りで比べる
- 利益をすべて役員報酬で受け取るなら、法人化で得になるのは利益1,500万円前後から(今回の試算)
- 会社にお金を残す・退職金や共済を組み合わせるなら、もっと低い利益から法人化を検討できる
- マイクロ法人は手取りが増えやすいが、事業の分け方と実態が前提。注意点を確認してから
- 消費税・役員報酬の決め方・設立後の届出など、タイミングの検討も大切
新宿パートナーズ税理士事務所では、法人化するかどうかのシミュレーションから、設立後の届出・記帳・決算まで一貫してサポートしています。「うちの場合はどうなる?」という段階でも、お気軽にご相談ください。
ご注意
本記事は2026年10月13日時点の法令・情報にもとづいて作成しています。税制は改正されることが多いため、お読みいただく時期によっては内容が変わっている場合があります。また、記事は一般的な情報をわかりやすくお伝えするためのもので、実際の取り扱いはお一人おひとりのご事情によって異なることがあります。内容には十分に注意しておりますが、本記事をもとにしたご判断の結果については責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。個別のご相談は、どうぞお気軽に当事務所へお問い合わせください。
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