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【否認される節税・されない節税】国税が問題視するスキームの見分け方|2026年の「節税封じ」の動きと提案を受けたときのチェックリスト
公開 2026.11.04

「この保険に入れば全額経費になります」「不動産を買えば相続税がぐっと下がります」。決算や相続の前になると、こうした節税の提案を受けることがあります。
節税そのものは、法律で認められた正当な行為です。ただし、税金を減らすことだけが目的で、実態のない取引をする節税は、税務調査で否認される(認められない)ことがあります。2026年は、国税庁が有識者会議や政府の税制調査会で節税スキームの事例を示し、対応を強める姿勢をはっきり打ち出しています。この記事では、2026年11月時点の法令・公表資料にもとづいて、否認される節税とされない節税の見分け方を整理します。
節税・租税回避・脱税の違い
税金を減らす行為は、大きく3つに分けて考えられています。
| どんなもの? | 例 | 税務署の扱い | |
|---|---|---|---|
| 節税 | 法律が予定している方法で、税金を減らす | iDeCo・小規模企業共済に入る 青色申告特別控除を受ける 30万円未満の備品を一度に経費にする(中小企業の特例) | 問題なし |
| 租税回避 | 違法ではないが、法律が予定していない不自然な形を使って、税金を大きく減らす | 税金を減らすためだけに会社を分けたり、取引の形を変えたりする 相続の直前に、評価が下がる資産に組み替える | 否認されることがある (規定や判決で認められないことも) |
| 脱税 | 売上を隠す・架空の経費を計上するなど、うそで税金を減らす | 売上の除外 架空の外注費・給与 | 重加算税・刑事罰の対象 |
問題になるのは、まん中の「租税回避」です。違法ではないものの、税務署から「取引の実態がない」「税金を減らす以外に目的がない」と判断されると、否認されることがあります。どこからが租税回避なのかに明確な線はなく、だからこそ判断が難しい部分です。
2026年、国税庁は「節税スキーム」への対応を強めています
2026年に入ってから、国税庁・財務省は節税スキームへの対応を強める方針を、公表資料ではっきり示しています。主な動きは次の3つです。
① 自社株(非上場株式)の評価:節税スキームの事例を公表
国税庁は、会計検査院の指摘を受けて「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開いています。2026年7月3日の第4回会議の資料では、自社株の相続税評価額を下げる具体的なスキーム事例を8つ示しました。
- 子会社の規模を操作して、評価方法を有利なものに切り替える
- 株主構成を操作して、低い評価方法(配当還元方式)を使えるようにする
- オペレーティングリースで一時的に大きな損失を出し、株価を下げる
- 会社で貸付用不動産を買い、3年たってから株式を移す など
評価方法の見直しは議論の途中で、まだ決まっていません。ただ、自社株の評価を下げる対策は、今後ルールが変わる可能性があることを前提に考える必要があります。
② 貸付用不動産の相続税評価:「5年ルール」の通達案
令和8年度税制改正大綱を受けて、国税庁は2026年9月18日に「貸付用不動産の評価について」の通達案を公表し、意見募集をしました(10月18日締切)。案のポイントは次のとおりです。
- 相続・贈与の前5年以内に買った(新築した)賃貸不動産は、路線価などではなく、原則として通常の取引価額(時価)で評価する。
- 取得価額が適正なら、取得価額に地価の変動などを反映した額の80%で評価することもできる。
- 不動産小口化商品は、取得の時期にかかわらず新しい評価方法の対象。
- 2027年(令和9年)1月1日以後の相続・贈与から適用する案。
「相続の直前に賃貸マンションを買って評価額を下げる」という対策は、効果が大きく下がる見込みです。最終的な内容は、正式な通達の公表を確認する必要があります。
③ スキームを売る「プロモーター」への対応
2026年10月20日の政府税制調査会の専門家会合では、財務省・国税庁が「租税回避等への対応」という資料を出しました。資料では、節税スキームを多くの納税者に販売する「プロモーター」の例として、税理士法人・株式会社・金融機関などが挙げられています。
- グループ法人税制などを使い、実態のない多額の損失を作るスキームを数十法人に販売
- 総合課税と分離課税の税率の差を使うスキームを数十人に販売(令和8年度改正で、さらに個別の否認規定が設けられた)
- ペーパーカンパニーを使い、消費税の還付を生じさせるスキームに関与
- 金融機関が、組織再編や資産の取得で相続税評価額を下げる案を、具体的な金額を示して提案し、報酬を得ている
新しい規制がすぐに決まったわけではありませんが、国税庁はスキームを分析・調査する専門の部署を置き、全国から情報を集めていると説明しています。販売されている節税スキームは、税務署にも把握されやすくなっていると考えておくべきです。
節税はどうやって否認される?4つのパターン
節税が否認されるパターンは、大きく分けて次の4つです。
| パターン | 内容 | よくある例 |
|---|---|---|
| ① 実態がない | 書類上の形はあっても、実際にはその取引・仕事がない | 働いていない家族への給与 実体のないコンサル料・外注費 私的な支出を会議費にする |
| ② 個別の否認規定 | 特定のスキームを止めるために、法律で「この場合は経費にしない」と決める | 倒産防止共済の再加入(2年以内の掛金) 国外中古建物の減価償却による損失 |
| ③ 行為計算の否認 | 同族会社や組織再編で、税金を不当に減らす取引を税務署が引き直す | 同族会社の行為計算否認(法人税法132条など) 組織再編の行為計算否認(法人税法132条の2) |
| ④ 評価通達の「総則6項」 | 相続税の評価額が、通達どおりだと著しく不適当なとき、時価で評価し直す | 相続直前に借入れでマンションを買い、評価額を大きく下げた例(最高裁令和4年4月19日判決で否認) |
特に④の最高裁判決は、通達どおりに計算していても、税負担を減らすことだけが目的で、ほかの納税者との公平を大きく損なう場合は否認されうることを示した例として、よく知られています。
これまでに封じられてきた節税
広く使われた節税は、その後のルール変更で封じられることがよくあります。代表的なものをまとめました。
| 節税の方法 | 何が変わった? | 時期 |
|---|---|---|
| 全額損金の生命保険(いわゆる節税保険) | 解約返戻率が高い保険は、保険料の一部を資産に計上するルールに | 2019年 |
| 名義変更プラン(会社で入った保険を、解約返戻金が低いときに個人へ移す) | 解約返戻金が低い時期に移した場合は、解約返戻金の額ではなく、会社が資産に計上している額などで評価するルールに | 2021年 |
| 国外の中古建物の減価償却(個人) | 短い耐用年数で計算した減価償却費による損失は、不動産所得の損失としてほかの所得と相殺できないことに | 2021年分から |
| 少額の資産の貸付け(足場・ドローンなどをまとめて買って貸す) | 主要な業務でない貸付けに使う資産は、少額減価償却資産などの特例の対象外に | 2022年4月から |
| タワーマンションなどの区分所有マンション(相続税) | 評価額と市場価格の差を補正する新しい評価方法に | 2024年1月から |
| 倒産防止共済の解約・再加入 | 解約してから2年以内に再加入した場合、その2年間の掛金は経費にならないことに | 2024年10月から |
| 賃貸不動産・不動産小口化商品(相続税) | 5年以内に取得した賃貸不動産などは、原則として時価で評価する案 | 2027年1月から(予定) |
流れを見ると、「多くの人が使い、税金が大きく減る」節税ほど、数年以内に封じられていることがわかります。 「今だけ」「みんなやっている」という言葉が出てきたら、ルールが変わる前提で考えておきましょう。
倒産防止共済などの共済を使った節税は、ルールを守れば今も有効です。くわしくは「共済で節税するしくみを比較」で解説しています。
否認されにくい節税・否認されやすい節税
否認されにくいかどうかは、「その支出・取引に、事業上の理由と実態があるか」でほぼ決まります。
| 否認されにくい | 否認されやすい |
|---|---|
| iDeCo・小規模企業共済など、法律がはっきり認めている制度 | 税金を減らす以外の目的が説明できない取引 |
| 事業に本当に必要なものを、決算前に前倒しで買う | 使う予定のないものを、決算前にまとめて買う |
| 実際に働いている家族への、仕事に見合った給与 | 働いていない家族への給与、仕事に比べて高すぎる給与 |
| 規程を作り、実態どおりに支払う出張の日当・社宅 | 規程はあっても、実際には出張していない・私的に使っている |
| 保障が本当に必要で入る保険 | 解約することが前提で、解約時期まで決まっている保険 |
| ルールどおり継続して使う短期前払費用(1年以内の分) | 決算月だけ、まとめて前払いして経費にする |
期末の駆け込み節税は、「お金が外に出て戻ってこない」ものがほとんどです。たとえば100万円の経費を使って減る税金は、中小企業ならおおむね25〜35万円程度です。税金を減らすために、それ以上のお金を使っていないかも確認しましょう。期末の対策は「出張旅費規程で節税」「修繕費?資産計上?」でも解説しています。
「税理士が勧めた節税」なら大丈夫?
残念ながら、税理士や金融機関に勧められた節税でも、否認されれば税金を払うのは本人(会社)です。
- 否認されると、本来の税金に加えて加算税や延滞税もかかります。
- 「専門家に任せていた」ことは、原則として加算税を免れる「正当な理由」とは認められにくいです。
- 勧めた側に責任を問えるかは、契約や説明の内容しだいで、裁判で争うことになります。
前の章のとおり、政府の資料でも税理士法人や金融機関がプロモーターになっている例が挙げられています。提案した人の肩書きではなく、中身で判断することが大切です。
否認されるとどうなる?
税務調査で節税が否認されると、修正申告をして、不足した税金と次の税金を払うことになります。
- 過少申告加算税:追加で払う税金の10%(期限内に申告した税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)
- 重加算税:事実を隠したり偽ったりしたと判断された場合、35%(無申告なら40%)
- 延滞税:本来の納期限から納付する日までの日数に応じてかかる
また、相続税の評価や自社株の対策のように金額が大きいものは、数千万円〜億単位で追徴されることもあります。加算税・延滞税の計算は「税務調査の追徴課税はいくら?」、修正申告を勧められたときの対応は「税務調査で修正申告を勧められたら」で詳しく解説しています。
節税の提案を受けたときのチェックリスト
節税の提案を受けたら、契約する前に次の点を確認しましょう。
- 税金を減らす以外に、事業上の目的を説明できるか(その取引がなくても困らないなら要注意)
- お金や物の動きが、書類の内容どおりか(実態があるか)
- 解約・売却のタイミングまで決まっていないか(最初から元に戻す前提のものは要注意)
- 「必ず」「全額」「税務署も認めている」と言い切っていないか
- 手数料や報酬が、節税額にくらべて高くないか
- 否認されたときに誰が何を負担するか、説明や書面があるか
- 最近のルール変更や、改正予定の対象になっていないか
- 提案した人とは別の、利害関係のない税理士に確認したか
ひとつでも引っかかったら、すぐに契約せず、「否認されたらいくら払うことになるか」まで試算してから判断しましょう。
新宿パートナーズにご相談いただく場合
弊所は、国税OBのスタッフと税理士のチームで、税務署の目線から見て通る節税かどうかを、条文・通達・裁判例をもとに判断しています。
- 受けた節税の提案のセカンドオピニオン(リスクと、否認された場合の負担額の試算)
- 決算前の節税のご相談(共済・役員報酬・設備投資のタイミングなど、ルールの範囲内で)
- 税務調査の立会い・対応(否認を指摘されたときの説明や交渉)
顧問契約がなくても、まずはお問い合わせからお気軽にご相談ください。料金は料金プラン・シミュレーションでご確認いただけます。
まとめ
- 節税は正当な行為。ただし、税金を減らすことだけが目的で実態のない取引は、租税回避として否認されることがある。
- 2026年は、自社株評価のスキーム事例の公表(7月)・賃貸不動産の評価の通達案(9月)・プロモーターの事例報告(10月)と、国税庁の対応が強まっている。
- 広く使われた節税ほど、数年以内にルール変更で封じられる傾向がある。
- 否認されにくいかどうかは、事業上の理由と実態があるかで決まる。
- 税理士や金融機関が勧めた節税でも、否認されれば本人が税金・加算税を払う。
- 提案を受けたら、否認されたときの負担まで試算し、利害関係のない専門家に確認してから判断する。
ご注意
本記事は2026年11月4日時点の法令・国税庁などの公表資料にもとづいて作成しています。税制や通達は改正されることが多く、記事中の通達案や有識者会議の内容は今後変わる可能性があるため、お読みいただく時期によっては内容が変わっている場合があります。また、記事は一般的な情報をわかりやすくお伝えするためのもので、実際の取り扱いはお一人おひとり・各社のご事情によって異なることがあります。内容には十分に注意しておりますが、本記事をもとにしたご判断の結果については責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。実際のお手続きにあたっては、税理士または税務署にご確認ください。個別のご相談は、どうぞお気軽に当事務所へお問い合わせください。
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