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【税務調査の無予告・抜き打ち】事前通知なしで来たときの対応と反面調査・取引先への影響
公開 2026.10.11

「ある日、開店準備をしていたら税務署の人が突然やって来た」。税務調査は事前に連絡があるものと思っていた方にとって、無予告の調査はとても驚く出来事です。また「取引先や銀行にまで調べが入るのでは」と心配される方も少なくありません。
この記事では、事前通知なしの調査(無予告調査・抜き打ち調査)が行われる場合の法律上の要件、来たときの落ち着いた対応のしかた、取引先や金融機関への「反面調査」のしくみを、国税通則法と国税庁の公表資料にもとづいて解説します。
税務調査は原則として事前通知がある
国税通則法74条の9により、税務署が納税者の事業所や自宅に出向いて行う調査(実地の調査)では、原則として事前に通知をすることになっています。通知される主な内容は、調査を始める日時・場所、調査の目的、対象となる税目と期間、対象となる帳簿書類などです。
国税庁の事務運営指針でも、事前通知は原則として、納税者と税務代理人(税理士など)の双方に、調査開始日までに相当の時間的余裕をおいて電話等で行うとされています。事前通知があった場合の流れは税務調査の連絡が来たらの記事で詳しく説明しています。
事前通知なしで調査が行われる要件(国税通則法74条の10)
例外として、国税通則法74条の10は、次のような「おそれ」があると税務署長等が認める場合には、事前通知をしなくてよいと定めています。判断の材料になるのは、納税者の申告や過去の調査結果の内容、営んでいる事業の内容に関する情報、その他税務署などが持っている情報です。
- 違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等や税額等の把握を困難にするおそれ
- その他、国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
国税庁の通達(国税通則法第7章の2関係通達5-9・5-10)では、これに当たる場合の例として、次のようなものが挙げられています。
| 区分 | 通達で示されている例(要約) |
|---|---|
| 正確な把握を困難にするおそれ | 事前通知をすると、帳簿書類などを破棄・移動・隠匿・改ざんすることが合理的に推認される場合 |
| 過去の不正の発見を難しくする目的で、調査の時点だけ適正な記帳をしている状態を作り出すことが合理的に推認される場合 | |
| 従業員や取引先などに、隠ぺい等への協力や調査への協力を控えるよう頼むことが合理的に推認される場合 | |
| 調査の遂行に支障を及ぼすおそれ | 税理士など税務代理人以外の第三者が立会いを求め、調査に支障が出ることが合理的に推認される場合 |
| 相応の努力をして電話等で連絡しようとしたが、応答を拒否された、または応答がなかった場合 | |
| 事業の実態が分からず、実際に行ってみないと通知先が判明しない場合 |
つまり、無予告調査は「税務署の気分次第」で行われるものではなく、法律と通達にもとづいて、個々の事案ごとに判断されるものです。ただし国税庁のFAQでは、事前通知をしなかった理由は法令上説明することとされておらず、事前通知をしないこと自体に不服申立てはできないとされています。
「現金商売に多い」と言われるのはなぜ?
飲食店や小売店、美容業など、現金で売上を受け取る業種では無予告調査が多いと言われます。法律や通達との関係を見ると、その背景が分かります。
通達5-7では、74条の10の「その営む事業内容に関する情報」には、事業の規模や取引内容、決済手段などの具体的な営業形態も含まれるとしています。現金取引が中心の事業では、事前に知らせると、その日のレジの現金や売上の記録を調査に合わせて整えられてしまうおそれがある、と判断されやすい面があると考えられます。
一方で、同じ通達5-7は、単に不特定多数の取引先と現金決済で取引しているということだけでは、事前通知をしない理由にはならないともはっきり書いています。現金商売だから必ず抜き打ちになる、というわけではありません。
無予告調査の件数や業種別の割合は、国税庁の公表資料では確認できませんでした。「〇割が無予告」といった数字には根拠がないものもあるので注意しましょう。業種ごとの調査のポイントは業種別の記事で紹介しています。
無予告で税務署が来たときの対応
突然の来訪でも、慌てずに次の順番で対応しましょう。
1. 身分証明書と質問検査章を確認する
国税通則法74条の13により、調査担当者は身分を示す証明書を持ち歩き、求められたら提示しなければなりません。国税庁の事務運営指針でも、実地の調査では身分証明書(国税職務証票)と質問検査章を必ず携帯し、相手に提示したうえで調査に臨むとされています。税務署を名乗る人が来たら、まず落ち着いて提示をお願いし、氏名と所属の税務署を確認しましょう。
2. 調査の内容の説明を受ける
事務運営指針では、事前通知なしで調査を行う場合でも、臨場後速やかに、調査を行う旨、調査の目的、対象となる税目・期間、対象となる帳簿書類、調査担当者の氏名・所属などを通知するとされています。何の税金の、いつの分の調査なのかを確認し、メモしておきましょう。
3. 顧問税理士がいればすぐに連絡する
税理士に税務代理を頼んでいる場合、事務運営指針では、税務署は税務代理人にも臨場後速やかに調査の内容を通知することとされています。ご自身からも税理士に連絡し、立会いや今後の対応を相談しましょう。税理士がいない場合でも、調査の途中から依頼することができます。なお国税庁のFAQでは、調査に立ち会って納税者の代わりに主張や説明ができるのは、原則として税務代理人(税理士など)だけとされています。
4. 事情があれば、その場で相談する
事前通知を受けた調査の日時変更については、法律に協議のしくみがあります。一方、無予告で来た場合に「日を改めてもらう権利」を定めた規定は、公的な資料では確認できませんでした。ただ、税務調査は国税庁の資料でも「納税者の理解と協力を得て」行うものとされています。営業中で手が離せない、税理士の到着を待ちたいといった事情があれば、正直に伝えて相談してみましょう。応じてもらえるかどうかは、状況や調査担当者の判断によります。
5. 拒否・妨害はしない。資料を捨てない・作り直さない
正当な理由なく質問に答えなかったり、帳簿の提示を拒んだり、検査を妨げたりすると、罰則(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象になりえます(国税通則法128条)。また、帳簿の提示等を求められたのに遅滞なく提示しないと、加算税が加重されることがあります。国税庁のQ&Aでは、無予告の調査でも、調査対象の帳簿の説明を受けた後に遅滞なく提示しなければ加重の対象になるとされています。慌てて書類を捨てたり、作り直したりすることは、絶対にやめましょう。
無予告調査と強制調査(査察)の違い
無予告で来たからといって、強制調査とは限りません。74条の10による無予告調査は、あくまで任意調査の一種で、事前通知が省略されているだけです。一方、いわゆる「マルサ」と呼ばれる査察(犯則調査)は、裁判官の許可状にもとづいて行われる強制調査で、手続きがまったく異なります。違いについては任意調査と強制調査の記事で詳しく解説しています。
反面調査とは?取引先や銀行への調査
反面調査とは、調査を受けている本人ではなく、取引先など本人以外の人に対して行う調査のことです。国税通則法74条の2では、所得税・法人税・消費税の調査について必要があるときは、本人とお金や物のやり取りがあった相手などにも、質問をしたり帳簿書類の提示・提出を求めたりできると定めています。たとえば、売上先に支払額を確認したり、取引のある金融機関で口座の動きを確認したりすることがこれに当たります。
国税庁のFAQでは、反面調査は、取引先など本人以外に調査をしなければ申告内容の正確な事実の把握が難しいと認められる場合に行うことがある、と説明されています。反面調査には事前通知の法令上の規定はありませんが、運用上、原則として相手方にあらかじめ連絡するとされています。
取引先の税務調査で、自分の申告に関係する情報が見つかることもあります。国税庁のFAQでは、取引先の調査で非違につながる情報が把握された場合には、すでに調査を受けた年分でも再調査が行われることがあるとされています。
取引先に知られるのが心配なときは
「取引先に調査が入って、信用を失わないか」という心配はもっともです。公的な資料から分かることを整理します。
- 反面調査は必要がある場合に行うもの:事務運営指針では、反面調査の実施にあたって、その必要性と事前連絡の適否を十分に検討するとされています
- 反面調査であることは明示される:取引先には、本人の調査ではなく反面調査である旨を明らかにして行うとされています
- 調査担当者には守秘義務がある:調査で知った秘密を漏らすと、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります(国税通則法127条)
国税庁の説明からすると、反面調査は「本人の調査だけでは事実が確認できない」ときに行われるものです。本人の調査の段階で、契約書・請求書・入金記録などの資料をそろえ、取引の内容をきちんと説明できれば、それだけ事実の確認が進みやすくなります。取引先への影響が心配なときは、その気持ちも含めて、早めに税理士に相談しておくと安心です。
当事務所では、元国税調査官(国税OB)のスタッフが、調査で確認されやすい資料をあらかじめチェックします。当日の立会いや税務署とのやり取りは税理士が対応し、オンライン立会いで全国に対応しています。
よくある質問
Q. 無予告の調査は断れますか?
A. 無予告でも任意調査ですが、正当な理由なく質問に答えない、帳簿の提示を拒む、検査を妨げるといった対応は罰則の対象になりえます。断るのではなく、事情があればそれを伝えて相談し、税理士に連絡したうえで協力する姿勢が大切です。
Q. なぜ事前通知がなかったのか、理由は教えてもらえますか?
A. 国税庁のFAQによると、事前通知を行わなかった理由は法令上説明することとされておらず、事前通知をしないことに対して不服申立てもできません。ただし、調査の対象となる税目・期間や目的などは、臨場後速やかに説明することとされています。
Q. 反面調査が入ると、取引先に何の調査か伝わりますか?
A. 反面調査である旨は取引先に明示されますが、調査担当者には守秘義務があり、調査で知った秘密を漏らすことは法律で禁じられています。取引先への説明が必要になりそうな場合は、伝え方も含めて税理士に相談するとよいでしょう。
Q. 家族や従業員に立ち会ってもらってもいいですか?
A. 国税庁のFAQでは、代わりに主張や説明をする立会いは原則として税理士などの税務代理人に限られ、守秘義務の関係から第三者の立会いは断ることがあるとされています。ふだん記帳を担当している人は、調査担当者が必要と認めた範囲で同席できる場合があります。
まとめ
税務調査は原則として事前通知がありますが、国税通則法74条の10の要件にあたると判断された場合は、無予告で行われることがあります。現金商売だからというだけでは無予告の理由にならないことも、通達で明記されています。無予告で来たときは、身分証明書と質問検査章を確認し、調査の内容の説明を受け、税理士に連絡しましょう。資料を捨てたり作り直したりせず、事実にもとづいて対応することが大切です。
反面調査や取引先への影響が心配な方、突然の調査で困っている方は、当事務所にご相談ください。顧問契約がなくてもスポットでお受けし、初回相談は無料です。お気軽にご相談ください
ご注意
本記事は2026年10月11日時点の法令・情報にもとづいて作成しています。税制は改正されることが多いため、お読みいただく時期によっては内容が変わっている場合があります。また、記事は一般的な情報をわかりやすくお伝えするためのもので、実際の取り扱いはお一人おひとりのご事情によって異なることがあります。内容には十分に注意しておりますが、本記事をもとにしたご判断の結果については責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。個別のご相談は、どうぞお気軽に当事務所へお問い合わせください。
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